風になったアナタへ
黒い髪に茶色の瞳を持った華奢な体は、金髪で青い瞳を持った家族に対して抵抗を始めた。一体自分は誰なのだろう、という答えの出ない大きな問いに行き詰まりを感じたリンは、安らげる手段としてドラッグに手を出すようになった。

「試したことのないドラッグはないかも。手当たり次第やってみたわ」

彼女は、このセリフを笑って私に話してくれた。

「ドラッグをやめようと思っても、ドラッグ仲間と縁を切ったら、自分の居場所が無くなるみたいで仲間を切れなかった。仲間を切れないって事は、ドラッグとも切れないって事なんだけどね。でも、あの頃の私があって、今の私があるの」

リンの話し方は、まるで、幼い頃に親と遊園地に行った時の話でもしているかのように穏やかだった。悲壮感とか後悔とか、そんなものは全く感じさせない彼女の話し方に、私は彼女の強さを見た。
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