風になったアナタへ
「でも、親はビックリしたみたい。それまで、私は『いい子』だったからね。そりゃそうよね、短大で真面目に勉強をしているとばかり思っていた我が子が、いつの間にかドラッグ中毒になっていたんだから」

そう言って笑った後、リンは、ぽつりと、

「でもね、ママには感謝してるの。私は、あの人を心から尊敬してる。あの人は、本当に偉大な人だと思う」

と目を潤ませた。

ドラッグで身も心もぼろぼろになったリンを、母であるパトリシアは自分のもとへ連れ戻したそうだ。

暴れて泣き叫ぶことを繰り返すリンを24時間体制で看護し、ドラッグ仲間と接触が持てないように見守ったのはパトリシアだ。

リンを救ったのは、惜しみないパトリシアの愛情以外の何ものでもない。リンを苦しめる原因となった家族だったが、結局は彼女を救ったのも家族だった。

リンが自分の過去を全て話してくれたこの日、私はリンを守りたいと微力ながらに思ったのを記憶している。
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