風になったアナタへ
「お兄ちゃん達は、とっくに独立して他の町にいるわ。父親はね……、あんな奴大嫌い。数年前にママとパパは離婚したわ。あんな奴に学費を出してもらうのはゴメンだから、学費は大学から借りてるの。働くようになったら少しずつ返すわけだけど。だから早く一流デザイナーにならなきゃ」

リンは、いつもそうだ。どんな負の力も正の力に変換させる力を備えている。自分が孤児院の出であることも、養女であることも、ドラッグ中毒になったことも、両親の離婚も。

「リンは『赤毛のアン』みたいだね」

私は思わず言った。

「は? どこが? 私、赤毛じゃないよ。自分の黒い髪ダイスキよ」

リンの強さを、リンの逞しさを、再認識させられた瞬間だった。

「で、ホントに冬休みは日本へ帰るの?」

「だってチケット買っちゃったもん」

「そっか。ちょっと寂しいけど、葉月だってお母さんに会いたいものね」

「うん」

素直に『うん』と答えてしまった自分の耳が赤くなるのが自分でも分かった。

「今年は別々のクリスマスでも来年は葉月と一緒に日本でクリスマスねっ!」

リンは興奮した様子でそう言った。
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