風になったアナタへ
1998年6月末(リンとの別れまで残り約20日)

~リン、頑なに拒否~

私の母は日本へ帰り、私の最後のキャンパスライフとなる夏学期が始まった。

夏学期の授業を受ける生徒は少なく、キャンパスは閑散としていた。私は、写真の授業を受けていて、そのファイナルプロジェクトの制作に追われる毎日だった。

テーマは自由で、1冊のフォトエッセイを提出しなければならなかった。私は、自分の大好きな友達・教授・お世話になった人々に、私へのメッセージが書かれたボードを持ってもらい、それぞれを撮影して1冊のアルバムにしようと思った。

先ずはリンを撮ろう。そう思った私は、リンに私の制作アイデアを話した。

「えーっ! ヤダ! 私、写真てキライなの。とにかく私はパス」

とリンは私の懇願を一蹴した。

「私の大好きな人達だけが載る写真集なんだよ? だからリンを撮りたいの! そりゃ、教授やクラスメートにはプレゼンする時に見せることになるけど、基本的には私個人用のアルバムになるわけだし。撮るのも現像するのも私がやるの。プレゼンが終わったら絶対に誰にも見せないから、だから、お願いッ」

しかし、何度説得をしてもリンは、笑いながらも頑なに拒否した。
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