風になったアナタへ
「死んだ? ウソでしょ? ウソでしょ?」

正直、ここから私の記憶は無い。気が付いたら、泣きながらリンの家の前に立っている自分が居た。震える手で玄関のチャイムを鳴らすと、パトリシアが出てきた。

全てが本当なのだと、パトリシアの顔を見てようやく実感した私は、パトリシアに抱きついて大声をあげて泣き崩れた。パトリシアは、何も言わずに私をしっかり抱きしめていた。

「葉月、あなたには連絡をしなきゃって思っていたの。でも、あなたの電話番号はリンしか知らなくて、電話帳で調べようにもあなたのラストネームが分からなくて。でも、こうしてあなたが電話をかけてくれて本当に良かったわ」

パトリシアは取り乱すこともせず、淡々と、でも優しい声でそう言った。
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