風になったアナタへ
私が一頻り泣くと、パトリシアは私をリビングへ招き入れ、落ち着くから飲みなさい、とカモミールティーを入れてくれた。

私は、パトリシアの顔を直視することが出来ず、リンの飼い犬である黒いコッカースパニエルのベイリーを見つめ続けた。

時の流れを痛いと感じるのは、この時が初めてだった。犬は涙を流すのだろうか。ベイリーは二度とリンに抱いていもらえない事を分かっているのだろうか。そんなことを朦朧とした頭で考えていた。次から次へと、はらはらと涙が頬を伝った。

「私もね、昨日までは泣き続けていたわ『どうして? どうして?』ってね。でも何をどう考えても答えは出ないし、泣いても叫んでもリンは戻ってこないのよ。だからね、あの子の写真の整理を始めたの。少なくとも、写真の中のあの子と向き合っている時だけは、疲れてしまうような泣き方をしないで済むのよ」
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