風になったアナタへ
パトリシアは私の顔を見て、温かい声でそう言った。私は返す言葉を見つけられず、鼻がツンとなるのを歯を食いしばって堪え、笑おうと頑張りながら何度も何度も頷いた。

写真嫌いのリンが私に持たせようと撮った一枚の写真。それが遺影になるのだ。私は思わず、その写真を胸に抱きしめた。

その瞬間だった。

ガタガタガタガタ……。私とパトリシアの向かい側にある大きな窓ガラスが、突然の台風にでも襲われたかのように激しく音をたてて揺れた。目をやると外はいつまにか暗くなっていた。私とパトリシアは互いの顔を見合わせた。

「リンが来て怒ってるのよ。写真嫌いのリンだから、こうして私があなたに、昔の写真を見せていることに、文句を言っているんだわ」

パトリシアは、包み込むような目で窓の外の静かな暗闇を見つめながら、そう小さく呟いた。
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