風になったアナタへ
それから土曜日を迎えるまで、私は誰と話したのか、何をしたのか殆ど記憶していない。

覚えていることは、リンが死んだというのに空腹を感じる自分に気付いて、その度に酷く苛立ったこと。そして、授業中に涙がこぼれないように、『どうかした?』と友達に尋ねられないように、明るく振舞ったこと。

『どうかした?』なんて聞かれたら、誰かに優しい言葉なんてかけられたら、私は気が変になってしまいそうだったのだ。人前で素直に泣けるタイプじゃない。

その代わり、日中こらえていたものは、夕方アパートに帰り、ドアを開けて閉めた瞬間に、一気に溢れてくる。靴さえも脱ぐ前に体の力は抜け、そのまま玄関にヘナヘナと座り込み泣きじゃくる。息が出来なくなって、頭が痛くなってきて、そうなって初めて靴を脱ぎ、キッチンにあるものを適当に食べ、シャワーを浴びて、憔悴しきった心と体をベッドに横たえ眠りに落ちる。

途中、目が覚めて時計を見ると、たいてい深夜の12時前後だった。眠った後というのは不思議なもので、感情も目覚めきれていないのか、憂鬱ではあっても泣くまでには至らない。その鈍感な感覚が、永遠に続けば良いのにと私は目覚める度に思った。
 
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