風になったアナタへ
あの日の午後3時35分、リンは生きていたのだろうか。それともリンの魂が私に最後の声の贈り物してくれたのだろうか。私は、何度も何度も、何度も何度も、メッセージの再生を繰り返した。その10秒にも満たないリンの声は、何故だか私を悲しみの淵から救い出してくれるのだった。リンは最後まで、自分の出番を知っているかのように、私の生活に入ってきてくれる人間だった。

*注釈
「モヤモヤ病」とは、ウィルス動脈輪閉塞症(原因不明の難病の一つ)の別名で、日本で初めて発見された病気であるという。日本を中心にアジアでの発症が多く報告されており、この病気は英語でも『moya-moya disease』と呼ばれている。

モヤモヤ病は脳血管の病で、脳の働きを支える太い動脈が閉塞してくることにより、様々な症状が起こる。症状は一過性のものから、大きく後遺症の残る脳梗塞、死にいたる脳出血まで様々である。

太い動脈の失った機能を補うために、無数の細い血管が脳の奥深くに達成する。血管に造影剤を入れてレントゲン撮影をすると、それらの細い血管が煙草の煙のようにモヤモヤと写ることから、発見した日本人医師により『モヤモヤ病』と命名された。
< 64 / 81 >

この作品をシェア

pagetop