風になったアナタへ
1998年7月24日(リンの死後1週間)

~初めての喪服~

授業が終わってから私は買い物に行った。翌日、着ていくための服や靴を揃える為に。

お店の人に声をかけられる事は苦痛以外の何物でもなかった。私は黒のシンプルなワンピースを買い、黒い靴と黒い小さなバッグを購入した。

それらは決して喪服として売られている物ではなかったため、肩の露出が多すぎると思った私は、黒いショールを探した。ショールを探しながら、数ヶ月前に、

「植物人間になったら、どうしたいか」

と話し合った事や、写真嫌いのリンが、私に持たせるための写真を自らパトリシアに撮らせていた事や、そして、リンが留守録にメッセージを残していた事に思いを巡らせた。あの時、私が言った、

「世の中に偶然は無いと思ってるもん。全部必然なのよ。こうして私がリンに出逢えたことも、今、こうして生と死の話をリンとしていることも、全て必然だと思っているの。前世で出会った人間とは、現世でもまた出逢うように出来ているって思ってる」

という会話を含め、全てが目には見えない宇宙規模の大きな力に操られている気がして、私は自分の無力さを実感するのだった。
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