風になったアナタへ
1998年8月某日(リンの死後約1ヶ月)

~日本へ~

大学での全ての課程を終えた私は帰国の準備に追われた。親切な友人達の協力も有り、車を含め家具や電化製品は瞬く間に売れた。

一日に何度も訪れる虚無感を払拭するために、私は猫を飼った。アーサーと名付けた子猫は、無条件に私を愛して癒してくれた。悲しみときちんと向き合う暇も無く、帰国の日が迫った。

リンの墓地の場所を訊こうと思い、パトリシアに電話を入れたが不在だった。しばらく息子の所に行くと言っていた事を思い出した。その後、何度かかけてみたが留守だった。 留守電に繋がる度に安心する自分が居た。本心では、お墓を訪れずに日本へ帰ってしまいたかったからだ。リンの死を受け入れられる自信がその頃の私にはまだ無かった。
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