風になったアナタへ
何も変わっていない。どこまでもどこまでも続く小麦の丘陵地帯。小さな小麦の苗が植えてある。それが夏になると鮮やかな緑になって、風に靡く。秋になると、それは一斉に金色に染まり胸をピンと張る。刈り取られたあとの冬には、その地平線まで続く丘陵地帯の一面に雪が積もり、どこか別の星に上陸してしまったかのような気がしてくる。 
春夏秋冬で、全く違う顔を見せてくれる、その景色を、私は四年以上も見ていなかったのだと思うと不思議な気持ちになった。

ところどころで目に留まる標識に、私の大学があるプルマンまでの距離が記されている。その距離が縮まるにつれて、自分が学生だった頃にタイムスリップしていくような感覚に見舞われた。私の旅に同行してくれている友達と二人で、

「なんだかドキドキするよぉ」

と喚きあい笑いあいながら、私達はプルマンに到着し、わざわざキャンパスの中へ車を乗り入れた。
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