先生
小さく折りたたんであった紙切れを開いてみる。
その紙切れに書いてあったのは大人の男の字。
大人の男の字でもね?
ただの大人の男の字じゃないんだ。
あたしが一目見ただけでわかるほどあたしが何度も見た、
愛しいと思う大好きなてっちゃんの字。
『ST終わったら俺の城に来い』
普通命令形で書く?
ってゆーかあたしにこんなのなんで渡すの?
期待しちゃうじゃん。
バカ……。
てっちゃんのバカ…
『来なかったら3年に上がれないかもよ?』
ずるいよ。
そんなこと言わなくったってあたしが行くことくらいわかってるでしょう?
ずるい。
ずる過ぎる。
紙切れを左手でくしゃっと握り教室を出る。
ST終わってから?
そんなのあたしが待てるわけないじゃん。
途中であった担任に
「ST出れるほど元気無いので保健室行ってきます」
なんてもう学校終わるっていうのに適当な嘘を並べててっちゃんの城まで急ぐ。
てっちゃんの城の前まできて、扉を見つめる。
1枚扉を隔てた向こう側にてっちゃんがいる。
そう思うと嬉しいような、
悲しいようなよくわからない感情が出てくる。