雪花
プロローグ
 雪が舞い落ちる。
 小さな小さな白い塊は、私の手のひらに落ちると一瞬で消えてなくなる。
 世界を白で覆い尽くす雪。

 明日の朝は、真っ白な世界だろう。

 真っ白な世界は、嘘っぽくて好きじゃない。
 その下には、汚い真実が隠れてる。


 あいつは言ってた。
 雪花が好きだって。

 だけど、私は…雪なんて、大嫌い。



 空を見上げた。あの日のように。
 あいつと二人で見た一度きりの景色。

 白い雪が、私の顔に落ちてくる。
 白いゴミが舞い散っているようにしか見えない。





「…雪なんて、嫌い…」

 雪の日には、悲しい出来事ばかり起こる。
 まわりが楽しそうで、あいつがいないことが寂しくなる。

 …あいつがいなくなったのも、雪の日だった。


 雪花…一人で見るのは、寂しいよ。

 いくら強がったって、こんな日は寂しくなる。


 早く、帰ろう。






< 1 / 17 >

この作品をシェア

pagetop