掻き鳴らせ、焦燥。〜春風に舞う〜


「ああ、読めないかな? ウエハラ ハジメって読むんだ。みんなはゲンさんとかゲンちゃんとか云うけどね」


「あっいや、読めます。『楽楽人』のほうにびっくりして、有名ですから」


「あはは、趣味趣味。おじさん、これしか取り柄がないのさ。
ところでねぇ、呼び止めたのは伝言があるからなんだよ」


「伝言……ですか?」


「ああ、今さぁ、Bスタに入ってる奴らなんだけど、ちょうどベース探してて、音漏れする君の音聴いて、ちょっと話したいってさ」


「はぁ?」



こんなことは初めてだった。
いったい、どうすればいいんだろう?





< 18 / 54 >

この作品をシェア

pagetop