掻き鳴らせ、焦燥。〜春風に舞う〜
人間ってこういう時、勝手に頭が下がるんだ。
なんて思いながら、恐る恐る顔を上げる。
アキトさんが「よろしく」と云って、右手を出した。
僕は思わず両手で握り締め、続けて出されたナオヤさんの手も飛び付くように握り返した。
「いてててっ、ハルちゃん。そんな強く握んなくてもいいよぅ〜」
「ああっ、すいません。ついっ」
こうして、僕はようやく自分の居場所を手に入れたんだ。
本当の自分で居てもいい場所を。