サンキューマイデイリー
雨の季節
雨の季節が今年もやってきた。講義を行っているホールはたくさんの人で蒸し蒸ししていて、暑いわけではないけれど決して快適なものではなかった。
松谷悠介はその講堂の一番後ろの列に陣取って、ぼんやりと響いてくる教授の話を聞いていた。欧米諸国の文学に興味の薄い悠介には、この授業はとても退屈なものだった。特に何をするでもなく、先週から降り続く雨に蒸す空気が気分悪いな、と思っていた。
「おい、おい悠介」
「なに?」
隣で熱心に携帯電話を見つめていた友人がこそこそ声で話しかけてきた。その顔はいかにも自分をからかいたそうに笑っていて、いやだな、と悠介は思った。
「この前飲み会の時さぁ、おまえ教育の女の子としゃべってたじゃん?」
「あぁ、なんだっけ…浅見さん?」
「その子がお前のアドレス教えてほしいっていってるんだけど!」
「……面倒くさいからいいよ、教えなくて」
先日、悠介が友達に引っ張っていかれた先の飲み会で知り合ったひとりの女の子がいた。浅見さんといって、教育学部らしく明るく前向きな、読書が好きだという女の子だった。悠介は無類の読書好きであるから、なかなか話もあってしばらく話し込んでいたのだ。
そんな彼女に悠介も好意的だったが、その話を聞いた途端がっかりしてしまった。
松谷悠介はその講堂の一番後ろの列に陣取って、ぼんやりと響いてくる教授の話を聞いていた。欧米諸国の文学に興味の薄い悠介には、この授業はとても退屈なものだった。特に何をするでもなく、先週から降り続く雨に蒸す空気が気分悪いな、と思っていた。
「おい、おい悠介」
「なに?」
隣で熱心に携帯電話を見つめていた友人がこそこそ声で話しかけてきた。その顔はいかにも自分をからかいたそうに笑っていて、いやだな、と悠介は思った。
「この前飲み会の時さぁ、おまえ教育の女の子としゃべってたじゃん?」
「あぁ、なんだっけ…浅見さん?」
「その子がお前のアドレス教えてほしいっていってるんだけど!」
「……面倒くさいからいいよ、教えなくて」
先日、悠介が友達に引っ張っていかれた先の飲み会で知り合ったひとりの女の子がいた。浅見さんといって、教育学部らしく明るく前向きな、読書が好きだという女の子だった。悠介は無類の読書好きであるから、なかなか話もあってしばらく話し込んでいたのだ。
そんな彼女に悠介も好意的だったが、その話を聞いた途端がっかりしてしまった。