サンキューマイデイリー
私の体は、いつも重いのだ、と林律子は言っていた。

「すっごくすっごく重いの。おかしいよね、こんなにガリガリで、私よりもちゃんとお肉のついてる子が走ったり飛んだりしてるのに。私、なんでこんなに重いのかな。やっぱりもうだめなのかな、ねぇ先生、みんなもこんな風に体が重いことってあるのかな。……ないよね、きっと。私の体がだめなんだよね、ホント、何もできなくていやになるな」

そこまでいう間も、林律子は笑っていた。林律子はいつも微笑んでいるし、些細なことでさもおかしそうに笑う。しあわせそうに笑う。それはそれは、とてもきれいだ。


「先生」
「う、わっ!」
「あははーぼーっとしてた。私やっぱり今日は帰るね、また明日」
「あ、あぁ…」


いつの間にかまたすぐそばに立っていた林律子は、不思議そうに保健医を見上げ、笑い、踵を返して去って行った。


林律子は保健医にとってあまりに身近になりすぎていた。彼女の前だとつい本音をこぼしてしまったり性格の悪さを隠す気も失せたり。近くなりずぎていた。
恋愛感情は、ない。林律子をそういう目で見たことはない。しかし、あまりに近づきすぎた。代理の期間が過ぎれば、すぐに自分は去っていく。そこに残れるはずもなかった。残りたいとも思わない。


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