サンキューマイデイリー
林律子が去って行った保健室に、入れ違って女子生徒たちが入ってくる。特に具合が悪くなくてもすぐ保健室に寄ってきては保健医に話しかける、ある種の常連だった。


「先生」
「なんだ?」
「またあの子きてたの?」
「あの子って…林か?」
「そう!いっつもいっつもいるよね、なんかずるい」
「ずるいって…体調悪いっていうんだから仕方ないだろう」
「絶対うそだよ!ずる休みしたくてそう言ってるに決まってるじゃん!」


口々に同意の言葉を並ぶ立てる女生徒たちに、なんでお前らにそんなことがわかるんだと叱ってやろうかと思ったがやめた。面倒事はいやだった。最近林が自分とデキてるとかなんとかいう噂があるということは、保健医もちゃんと知っていた。

「ほら、具合悪くないなら教室にもどりなさい。授業が始まるだろ」
「えー」
「先生わたしらは休ませてくれないのー」
「いい加減にしないと怒るぞ、さっさと行く。」

できるだけ苦々しい気持ちを表面に出さないようそう言ったつもりだったのだが、幾分か言葉にとげが出てしまったのだろう。いつもならまだまだ食ってかかってきそうなやつらが、今日はおとなしく引き下がって教室へ戻って行った。
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