サンキューマイデイリー
外を見ると雨が降っていた。
講堂に戻る気にはなれなかったが、荷物を全部置いてきてしまったのでどこにも行けなかった。講堂から延びる廊下沿いに用意された休憩室に入り、ひとり溜息をついた。白で統一された部屋の中は清潔そうに見えたがところどころにお菓子の包み紙などが散らばっていた。
松谷悠介は地方の高校を卒業し、首都圏とはいえないが地元よりはいくぶんか都市に近い場所で大学生活を営んでいた。もちろん一人暮らしで、アルバイトくらいしか特筆してやるようなことはなかった。趣味の読書に関連したサークルに入ろうかとも思って何件か回ってみたのだけれど、どこか肌に合わず結局はどこにも所属しないままでいた。
ただ、サークルを見学に行った先ではたまに気の合う人間を見つけ、その人とは連絡を取り合っていた。大手サークルに入っている公ほど多く友人がいるわけではないが、悠介にも少なからず友人と呼べる存在はいた。
それから高校時代から仲良くしている友人もいた。今の坂井海という女子、大賀という腐れ縁の男、その他、数人。
林律子は友人と呼べるか考えてみたが、ばからしくなってやめた。呼べるわけない。
松谷は彼女とほとんど言葉を交わしたこともなかった。
林律子とは高校3年生の一年間だけ同じクラスだった。といっても学校を休みがちだった彼女と同じ教室にいた記憶はあまり多くない。いつもあいていた林律子の席。いつも窓際の席だった。
「………そうか、死んじゃったのか」
悲しいだとか、そういう気持ちではなかった。
今ここにある現実を、もてあましているだけだった。
講堂に戻る気にはなれなかったが、荷物を全部置いてきてしまったのでどこにも行けなかった。講堂から延びる廊下沿いに用意された休憩室に入り、ひとり溜息をついた。白で統一された部屋の中は清潔そうに見えたがところどころにお菓子の包み紙などが散らばっていた。
松谷悠介は地方の高校を卒業し、首都圏とはいえないが地元よりはいくぶんか都市に近い場所で大学生活を営んでいた。もちろん一人暮らしで、アルバイトくらいしか特筆してやるようなことはなかった。趣味の読書に関連したサークルに入ろうかとも思って何件か回ってみたのだけれど、どこか肌に合わず結局はどこにも所属しないままでいた。
ただ、サークルを見学に行った先ではたまに気の合う人間を見つけ、その人とは連絡を取り合っていた。大手サークルに入っている公ほど多く友人がいるわけではないが、悠介にも少なからず友人と呼べる存在はいた。
それから高校時代から仲良くしている友人もいた。今の坂井海という女子、大賀という腐れ縁の男、その他、数人。
林律子は友人と呼べるか考えてみたが、ばからしくなってやめた。呼べるわけない。
松谷は彼女とほとんど言葉を交わしたこともなかった。
林律子とは高校3年生の一年間だけ同じクラスだった。といっても学校を休みがちだった彼女と同じ教室にいた記憶はあまり多くない。いつもあいていた林律子の席。いつも窓際の席だった。
「………そうか、死んじゃったのか」
悲しいだとか、そういう気持ちではなかった。
今ここにある現実を、もてあましているだけだった。