サンキューマイデイリー
チャイムと同時に目が覚めた。授業の終了を告げる先生の声といっしょに教室を満たすざわめき。悠介はまだ覚醒しきらない頭を持ち上げて首を左右に動かした。
前の席にはあの背中があると思ったのに、見てみれば彼女はこっちを向いていて、悠介はおどろいた。
「わ、」
「あ、ごめんね、おどろかした」
「……なに、か?」
「はじめましてだよね」
「はぁ、そうですね」
「松谷悠介くん」
「あれ?」
何で知ってるんだろう、という疑問で松谷の頭の中はいっぱいだった。こっちを向いている彼女の顔は白くて、でも頬は桜色をしていた。長い髪はゆるいウェーブがかかっていて、少し茶色い。
「よろしくね」
「はぁ…」
そうして自己紹介もせずに彼女は席を立ち、廊下に出て行ってしまった。
あっけにとられている悠介に、突進するかの様に近づいてくる女子、約一名。
「ちょっとちょっと松谷ったら!」
「うわ、な、なんだよ」
「何、なんて話しかけられたの!林さんに!」
「は、林、なんていうんだ?」
「え、知らないの?」
机に手をついて前かがみになってがなっていた坂井海はきょとんとした表情で悠介の顔を見返した。
「林律子さん、知らない?」
「知らないよ、同じクラスになったの初めてだし」
坂井海は悠介を物珍しそうに見つめて、溜息をついた。ほんと相変わらずなんだから、と言われた気がして、ちょっとだけ不愉快だった。
「林さんね、体が弱くてあんまり学校来ないし、来てもいつも保健室で本読んでるんだよ」
「あ、それうらやましい」
「こら」
あぁ、体が弱いのか、それは難儀だな、と思いながら、悠介は前の席をみた。
(だから、来てなかったのか)
「でね、あんまりに保健室にいるもんだから“保健姫”なんて呼ばれてて」
「なんだよ、そのネーミングセンス」
「保健の先生とできてるんじゃないかって噂もあるんだよ!」
「また噂、なんでそうそういうことばっかり知ってるかな坂井は」
そこでチャイムが鳴ったので、坂井海は自分の席に戻って行った。悠介は高い坂井のテンションに疲れてひとつ溜息をつくと、次の授業の準備を始めた。
林律子は、帰ってこなかった。
前の席にはあの背中があると思ったのに、見てみれば彼女はこっちを向いていて、悠介はおどろいた。
「わ、」
「あ、ごめんね、おどろかした」
「……なに、か?」
「はじめましてだよね」
「はぁ、そうですね」
「松谷悠介くん」
「あれ?」
何で知ってるんだろう、という疑問で松谷の頭の中はいっぱいだった。こっちを向いている彼女の顔は白くて、でも頬は桜色をしていた。長い髪はゆるいウェーブがかかっていて、少し茶色い。
「よろしくね」
「はぁ…」
そうして自己紹介もせずに彼女は席を立ち、廊下に出て行ってしまった。
あっけにとられている悠介に、突進するかの様に近づいてくる女子、約一名。
「ちょっとちょっと松谷ったら!」
「うわ、な、なんだよ」
「何、なんて話しかけられたの!林さんに!」
「は、林、なんていうんだ?」
「え、知らないの?」
机に手をついて前かがみになってがなっていた坂井海はきょとんとした表情で悠介の顔を見返した。
「林律子さん、知らない?」
「知らないよ、同じクラスになったの初めてだし」
坂井海は悠介を物珍しそうに見つめて、溜息をついた。ほんと相変わらずなんだから、と言われた気がして、ちょっとだけ不愉快だった。
「林さんね、体が弱くてあんまり学校来ないし、来てもいつも保健室で本読んでるんだよ」
「あ、それうらやましい」
「こら」
あぁ、体が弱いのか、それは難儀だな、と思いながら、悠介は前の席をみた。
(だから、来てなかったのか)
「でね、あんまりに保健室にいるもんだから“保健姫”なんて呼ばれてて」
「なんだよ、そのネーミングセンス」
「保健の先生とできてるんじゃないかって噂もあるんだよ!」
「また噂、なんでそうそういうことばっかり知ってるかな坂井は」
そこでチャイムが鳴ったので、坂井海は自分の席に戻って行った。悠介は高い坂井のテンションに疲れてひとつ溜息をつくと、次の授業の準備を始めた。
林律子は、帰ってこなかった。