あなたが一番欲しかった言葉
結城さんが店に現れる時は、決まって同じ女性が一緒だった。

ストレートの黒髪が綺麗な30代前半の控えめな女性。

40代の結城さんの年齢を考えると、奥さんではないと分かっていた。けれど、もちろん口に出すようなことはしなかった。

「彼女はね、俺が会社を立ち上げた頃からいる事務員だったんだ」

結城さんは、健康食品を輸入販売している会社を経営している。
昨今の健康ブームもあって、小さいながらも年々業績を伸ばしていた。

「彼女は、祥子っていうんだがな、父親の仕事の関係で幼い頃から海外生活が長くて、まあ、今で言う帰国子女ってやつだな。英語がぺらぺらなんだ。
それで向こうの、アメリカ現地のバイヤーとの窓口になってもらい、手続きのすべてを任せていたんだ」
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