あなたが一番欲しかった言葉
「それより、結城さんの話の続きを聞かせてください」

「まあいいや。今度彼女を紹介してくれよ」

「分かりましたから、その先を」

「まあ、焦るなって。その前にお代わりを」

結城さんは、空になったグラスを掲げた。



「俺は祥子のアパートに毎晩帰るようになったんだ。
彼女の手料理を食べ、彼女と一緒に風呂に入り、彼女の膝枕でテレビを見る。
当たり前で、普通の生活なのかもしれないが、俺たちにはそれがとても新鮮に思えて、幸せだった」

「そんな生活が、どれくらい続いたんですか?」

「短かったよ。1年ちょっとだ」
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