あなたが一番欲しかった言葉
「なあに、簡単なことさ。『やること』ただそれだけだ」

「やることって・・・それだけですか?一体何をやるって?」

あっけに取られながら結城さんの顔を見つめると、いたずらをした子供のように顔をくしゃくしゃにして、「成功の条件」を話してくれた。

「やるやつはやる。やらないやつはいつまでたっても何もやらない。
夢を掴むやつと、夢をいつまでも夢としか思わないやつの違いはそこなんだよ。
君の夢は歌手になることなんだろう?
だったらやれ。それだけだ。まず一歩を歩き出すんだ。
何にでもチャレンジをしろ。立ち止まってるだけで、想いばかり膨らませたからって、夢には近づけないぞ」

胸の中で、長いこと膨らみ続けていた「迷い」という名の風船が、音を立てて破裂した。

「はい・・・」

去ってゆく結城さんを、俺は深々と腰を曲げて見送った。
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