あなたが一番欲しかった言葉
イサムの家は、駅から車で5分ほどの古いアパートの2階の角。

場所は知っていたが、実際にこうして家に呼ばれたのは初めてのこと。


「おーい、こっちこっち!」


駐車場所を探して徐行していると、真っ白なTシャツ姿のイサムが、窓から顔を出して手招きしていた。



「いらっしゃい。人が来ることなんて滅多にないからさ、必死で掃除したよ」


小さなブラウン管テレビと、同じく小さな冷蔵庫。
流しには、洗っていない食器が数枚置かれたままだった。

男の一人暮らしなんてこんなものだろう。


部屋の片隅に置かれていたのは、アコースティックギターと、小さなキーボード、MDコンポ・・・イサムの夢へのアイテムが所狭しと並んでいた。
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