あなたが一番欲しかった言葉
イサムの愛車、中古の白いブルーバード。

型遅れの、燃費の悪いエンジン。

イサムの助手席には、いつもエミさんが座っていた。

僕と真梨子を乗せて4人で街へ繰り出したり、深夜に湖まで飛ばしたこともあった。

僕や真梨子にとっても、楽しかった思い出しかない白いブルーバード。


もうあの日々は2度と戻らない。
そう思ったら、胸にかすかな痛みが走った。

イサムと真梨子も同様に、目を伏せ思い出に浸っているようだった。


この数ヶ月、いろんなことがありすぎた。
ついこの前の出来事が、はるか遠い昔のことのように思える。


カラーの写真がまるでセピアに変わるように、時間はあっという間に過ぎ去っていく。

輝いていた思い出が褪せていくというのは、なんて切ないのだろう。
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