あなたが一番欲しかった言葉
いつまでこうしていただろう。

不意に人の気配がした。

泣き腫らした目で振り向くと、一人の男性が軽く会釈をした。

20代後半だろうか?
同じように寝ていないらしく、目の下に隈を作り、艶の無い疲れた顔をしている。

「すみません。お友達の方でしょうか?」

彼は遠慮がちに訊ねてきた。

「はい・・・バイト先で一緒に働いていたものです」

「そうですか・・・イサムにも涙を流してくれる友達がいたんですね」

「失礼ですけどあなたは?」

「イサムの・・・兄です」

「えっ」


イサムに兄がいたのか・・・?
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