あなたが一番欲しかった言葉
「ヨシ君、いろいろありがとうね。
真梨子にはあたしがついてるから、今日のところはうちに帰って、ゆっくり休んでくださいね」

「いえ、おばさんも寝てないでしょう?少し休んだほうがいいですよ」

「ありがとう。
重症を負ったけれど、とりあえずこうして真梨子は生きて帰ってきてここにいる。
今はもうそれだけで十分幸せです。
これからのことはこれから考えればいいじゃない。ねぇ、真梨子」


おばさんは、真梨子の目尻に流れる涙を手で拭うと、安堵の表情を見せた。


真梨子は、まるで貝のように黙り込んだままだ。

真一文に口を閉じたまま何も語ろうとせず、閉じた目からはいつまでも涙が流れ続けていた。
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