あなたが一番欲しかった言葉
「藤木さん。
例えば藤木さんくらいの年代のOLが、このビールフェアに払える金額って幾らくらいなんだろう」

藤木?最近入った子だ。

話したことは無いが、顔は見かけていた。
普通の女の子、といった印象しか持っていない。

隣に座るイサムの肩越しに彼女の姿を見つけた。
うつむき加減で首をひねっている

「うーん、2000円、やっぱり1500円かなぁ。
あたしたちの年代って、そんなに飲みませんよ、ビールって。最初の1杯くらいじゃないかな。次はサワーとかカクテルを頼んじゃうし。
あ、こういうのどうですか。カクテル飲み放題って」

ボーイッシュなショートカットに、アーモンド型の大きな目。

胸の一番隅っこの方が、思わずきゅんとなった。

にこりと微笑む藤木真梨子。

彼女を初めて意識した瞬間だった。
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