あなたが一番欲しかった言葉
「真梨子、それいいじゃん、カクテル飲み放題って!1500円。1500円でどうよ、店長」

エミさんは、突然立ち上がったかと思うと、栗色に染めた髪を揺らしながら、店長を指差して語り始めた。

酒豪のエミさんらしい立ち回りに、僕は吹き出した。

「ちょっと待ってよ、エミさん。缶ビールを一掃したくて僕、ビールフェアを企画したのに、なんでカクテルになっちゃうのよ」

「あそっか。それもそうだね」

エミさんと真梨子は目配せし、肩をすくめながら笑いを噛み殺していた。
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