あなたが一番欲しかった言葉
「はい次、イサムね」

唄い終えたエミさんは、投げるようにして、ポンとマイクをイサムに放った。

「あ、俺はいい。ヨシキが唄いなよ」

バトンを渡すようにして、歌詞本とマイクをヨシキに渡されたが、慌ててイサムに押し戻した。

「おいおい、ちょっと待ってよ、まだ何も準備ができてないから・・・」

「準備って、何の準備だよ。コスチュームでも着なきゃ唄えないってか?」

イサムの軽口にあわせ、真梨子が言う。

「アフロのズラをかぶるとか」

「あと、つけ髭ね」

どっと店の中が湧いた。

「なんだよエミさんまで。心の準備に決まってるだろう。何言ってんだよ」

真っ赤になって、むきになる僕の姿を見て、さらに大爆笑となった。
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