あなたが一番欲しかった言葉
スポーツクラブの帰り道、いつものように僕と祐介は行きつけの小料理屋に立ち寄った。

「いらっしゃい。いま帰り?」

ママの明るい声。

ピンクのTシャツ姿、ブラウンの髪を一つに束ねている。
笑顔はとても若々しくて、40代と聞いていたがとてもそうは見えない。

「今日はまっすぐ帰ろうって言ったんだけど、ヨシ君がどうしてもママの顔が見たいって言うからさ」

「おい、ふざけんな。おまえが行こうって言い出したんだろう」

祐介のでっぷりと膨らんだお腹を、指で突いた。
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