あなたが一番欲しかった言葉
「おまえ、いくつだ?」

社長に年を聞かれるイサム。

「は、はい、21です」

ぐいっと身を乗り出し、社長は突拍子もないことを言い始めた。

「じゃあ酒が飲めるよな。俺の酒、1杯飲めや。飲んだら許してやろうじゃないか」

「今ですか!?いや、ちょっと今は、仕事中ですので」

「仕事中だぁ?俺らのほかに客がどこにいるんだ、ああ?
『バイトだけのお遊びで成り立っているBAR。出されたカクテルも、居酒屋の方がずっとまし』
この業界は狭いんだ。あっという間に噂は広がるぞ。
おまえんとこの店長、さぞや困るだろうな」

やくざは堅気の人間に対しては嫌がらせなどしない。
こいつはたちの悪い中途半端なチンピラだ。

会話の端々から、同じような飲食業であると想像がつく。
店に恨みでもあるのだろうか。

それとも店長自身に?
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