あなたが一番欲しかった言葉
目線を下に落としたイサムが、個室から出てくる。

吐いたせいか、青白い顔をしている。その暗い瞳からは、感情が読み取れない。

殴られる・・・。

瞬間的にそう思い奥歯をかみ締めたが、予想に反して、イサムの言葉は静かだった。


「エミさんとのことは、ヨシキには関係ないだろう。
俺のことはいい。でも、エミさんのことを悪く言わないでくれ。
俺、あの人が好きだよ。エミさんも俺のことが誰よりも好きだって。
今はあの人しか見えないんだ。
昼間コンビニで働いている時も、路上で唄っていても、いつもエミさんのことが浮かぶ」

僕は黙って聞いていた。
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