あなたが一番欲しかった言葉
「だからヨシキ、ただの浮気だなんて、そんな風に軽く言わないでくれ。
俺はエミさんが大好きで、エミさんも俺が好き。それは紛れもない事実で、神様が出会わせてくれた奇跡なんだ。
ヨシキには分からないだろう。それ以上のものを求めても、手に入らないという辛さを」

何も言えなかった。
こんなに深く切ない吐露の前で、何も言えるはずがなかった。

人を本気で好きになるということ。
真梨子を今、現実に愛している僕にとっては痛いほど分かる。

分かるからこそ、ごめん言い過ぎた、その一言を言わねばならなかった。
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