あなたが一番欲しかった言葉
最愛 -海辺のホテル-
12月になり、カレンダーは今年最後の1枚となった。

僕は大学が、真梨子は専門学校での生活が忙しくなり、バイトで一緒になる日は少なくなったけれど、好きだという気持ちに変化はなく、むしろ会えない分だけ想いは募っていった。

どんなに忙しくても毎夜電話だけは欠かさず、話し始めれば2時間3時間があっという間に過ぎ去り、お互いに「受話器を押し付けていた耳が痛いね」と笑いあった。

「そう、そんなことがあったの。大変だったのね」

先日の夜の出来事を話すと、イサムの「一気飲み事件」のことよりも、その後の僕とイサムとの関係を真梨子は心配してくれた。

「イサムとは普通に話しているよ。
だけど、何かが確実に変わってしまったような気がする。
僕もイサムも、それまでと変わらぬ会話をしようと意識しているけど、それがかえってぎこちなくなる。
あいつ、もしかしたらバイトを辞めるかもしれないんだ。
親友だと思っていたけど、今も親友だと思いたいけど、もう以前のような無邪気に笑いあっていた関係には戻れないかもしれない」
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