あなたが一番欲しかった言葉
待ち合わせたマンションの隣にある駐車場に着く。

真梨子は、まだのようだ。

車のエンジンを止めると、ひと気の無い住宅街は静寂に包まれた。

エアコンの暖気が途切れ、急激に冷え始める車内に身震いを覚え、フリースジャンパーのファスナーを上げた。

バックミラーを通して、ちらちら後ろを振り返りながら
真梨子が現れるのを待った。

走り寄る小さな人影。

それが真梨子であることを確認すると、僕はいてもたってもいられずに外へ飛び出た。

突き刺すような街の冷気の中、白い吐息を弾ませながら、胸に飛び込んできた真梨子を、ぎゅっと抱きしめた。
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