あなたが一番欲しかった言葉
濡れている髪の毛から、シャンプーのいい香りがする。


「ねえ、もしかして、お風呂に入ってきた?」


見つめ合う真梨子の目が、いたずらをした子供みたいで嬉しそうに「うん」と頷いた。

微笑みを返しながら、僕はおでこにキスをした。


おでこから頬に。


頬から鼻先に。


見つめ合い、そして最後に、唇に触れた。


会えなかった日々を埋めるように、それは長い長いキスだった。
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