猫と君


俯いていた葵は
ゆっくりと顔を上げて

すがるような目で
警察の人たちを見て、



「……お父さんとお母さんは…どこですか?

怪我は大丈夫なんですか?」



「…っ!」


途端に
俺の目から涙が溢れてきた。


泣いちゃいけなかったのに…

止まらなかった。



警察の人たちは顔を見合わせて
静かに言った。


「現場には男性と女性と思われる焼死体が1体ずつ発見されました。
お互いにかばいあうように…重なったまま…。

おそらく広田大輝さん、麗子さん夫妻の死体だと…」



「……そう…ですか…」



細い声でそれだけ言った葵は
また俯いて、喋らなくなってしまった。





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