猫と君


葵は

泣くこともなく
笑うこともなく


ただ
前を向いていた。


でも
葵の眼はどこか遠くを見ている



いまだ
悪い夢から抜け出せていないように

葵の眼がどこをみているのかわからなかった。




「…麗子……っ…」


隣の母さんはずっと泣いていた。

その隣の父さんは震えながら
泣くのを堪えているようだった。



俺は…
なぜか涙が出てこなくて

ずっと葵を見ていた。




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