猫と君


「…慧?…泣いてるの?」


「…っ…ぅ……」



苦しかった
息ができなくなりそうだった。


俺は
心配そうに俺を見る葵を

引き寄せて


力いっぱい、抱きしめた。



「……け…ぃ?」


「…」


ぎゅうぎゅうと
細い体にしがみつくように…。




「…慧……
ふふっ…慧、あったか…ぃ…



…っ…ふ…ぅっ……」



葵の腕に力がはいる。
肩がじわりと濡れた。


「…け…ぃ…



もう、お母さんやお父さんに
こうやって抱きしめてもらえないんだね…



…もう

あったかくないんだね…っ…」



そう言って

葵は声を出して泣いた。



「葵…」


二人で泣いた。

二人で声を上げて泣いた。



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