Perfume 第一章
ようやく最後の鐘が鳴り



すぐに教室を出て早足で階段を降りる

逃げる様で
嫌だったけど

教室で注目される方がずっとずっと嫌だった



「陵っ」
上から瑞貴に呼び止められる

「一緒に帰ろう」
横に並んで歩き出す



玄関で愛美と愛美の友達のグループに会って気まずかったけど

なるべく気にしない様に通り過ぎる



伊崎の居るグラウンドの脇の道も、うつむきながら通り過ぎる

「陵は悪くないよ」
そんな俺を見兼ねて瑞貴がかばってくれる

「…ってか、さっきサンキューな」
「…あぁ。別に…事実を言っただけだよ」

照れた様に少しだけ瑞貴が笑う

「それに俺、嫌いだから…伊崎のこと」
急に瑞貴が表情を曇らせて言う

…意外だった

瑞貴が誰かを嫌いとか
そんな事は初めて聞いたから

でもそんな瑞貴がとても人間らしく思えて

少し安心した


こんな状況の中

初めて心の許せる友達が出来た様な気がして

少し嬉しくなって

心なしか足取りが軽くなる

もう学校は遥か彼方で

夏の終わりのまだ生温い風が俺と瑞貴の間を通り過ぎていく
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