走り出せ、コスモス<前編>
ホントにかわいいと思うけど、付き合うとかそういうのは考えられない。
だって そういう風に
考えたことない
期待させちゃいけないから、俺は沙枝ちゃんとできるだけ関わらないようにしてる。
ああー
もともと俺がかわいがって
「沙枝ちゃん」とか呼び出して
特別扱いしだしたのがいけなかったのかな。
沙枝ちゃんは、授業中1回も前を向かない。
質問も、もちろん来ない。
多分 あの子は諦めようと頑張ってると思う…
だから、俺も近づかない。
こういう風にしか手伝えないのが 残念だ。
そんな日々が続き、俺はしばらく沙枝ちゃんの声を聞いていない。
そういえば…声もかわいかったな…。
透き通ってて、ちょっと低めなのが
顔と合ってなくてなんとなくツボる。
「先生。」
思い出そうとしてた遠い声が、すぐ後ろから聞こえた。