走り出せ、コスモス<前編>
「吉風沙枝、英語98点だったそうですよ。」
デスクルームに入ってきた片桐先生に
俺は自慢げに言った。
片桐先生は数学を教えてて、沙枝ちゃんも春の講座だけ持ってた
厳しいけど優しいと生徒(特に女子)に人気が高い。
「98!?
うわー吉風やってしまいましたね~
藤石先生も鼻が高いでしょう。」
ふふん。 でしょ。
でも
この点数は9割9分
沙枝ちゃんの努力でとったものだ。
片桐先生は、自分の机に荷物をドカッと置いたあと、こっちを振り向いて言った。
「最近
吉風、吉風って
仲いいんですね。」
「えっ!
よくないですよ!!」
「…
そうなんですか?…」
……。
…いや待て。
…仲、いいぞ?
――どうして
嘘ついてしまったんだろう
なんだか、隠さなければならない気がした。
漠然と。