走り出せ、コスモス<前編>


家に帰ると、いつもテレビをつけてベッドに座る。

今日画面に映ったのは、初めて見るドラマ。

最近人気の派手めな女優が、料理を作ってるシーン。


あんた、ホントは料理なんてしないでしょう。

やっぱり、包丁で切るしぐさはおぼつかない。


料理できる女の子は、いいよなあ…。


自分のキッチンに目を移す。

もしここに、沙枝ちゃんがいたら。


包丁できれいにキャベツを切って、お皿に盛ってる沙枝ちゃんが浮かぶ。

絶対料理うまいよあの子…

でもお米の炊き方知らなかったりして。

『やったことないもん!』とかって。有りえるなぁ。


自然と笑みがこぼれる。


「はい、できたわよ」

テレビの中でその女優が言った。

「できたわよじゃねぇよ…」

でてきたのは、さっき切ってたのと全く別物。

誰か他の人が作ったんだろう。

笑みが笑いに変わった。


ラグに座ってる沙枝ちゃんが、俺に笑いかける

あのかわいい顔で









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