走り出せ、コスモス<前編>
18時00分
授業が全部終わって
ほとんどの生徒はもう帰ってしまった
数人の声が響いている。
その中でもひときわ澄んだ声が遠くから聞こえる。
その教室は彼女ひとりで、電話で誰かと話してるみたい。
「そうなんですか?
へえー。先輩も大変ですね。」
やっぱり
沙枝ちゃんだ
今日も沙枝ちゃんは授業中全く俺を見なかった。
あの話を聞いて
いつかちゃんと話さないとと思ってたら
突然チャンスがやってきた
「じゃあ、はい。
…さようなら。」
その声が聞こえて、俺は扉を開けた。
「塾内はケータイ禁止」
彼女はすごい勢いで振り向いた。