走り出せ、コスモス<前編>
「吉風さん 一人ですか?」
あ… 藤石先生
…
なんか… 今
会いたくなかったかも
「どうしたの?沈んでるけど」
え
なんで… 分かるの?
何も 言ってないのに
「あ、そういえば吉風さんて
下の名前 沙枝っていうんだよね」
「…はい」
なんか
この人には全部見透かされてるみたいで
見られたくない
「 沙 枝 って
すっげぇかっこいー名前」
…なんで!?
「シュッとしてて
その名前
吉風さんに似合うよね」
…別に
私 シュッとしてないし
ぶよーんだし…
うわ
自分で言って
自分でへこむ…
「俺の名前どっちかっていうと
ぽや~んとしてるからさぁ
憧れる」
藤石… 康治…か
確かにぽやんとしてるかも
でも似合ってるよ
「ねえ
下の名前で呼んでもいい?」
え
「え 何で」
「かっこいいから」
何で…?
「まあ いい…ですけど」
「ふふ ありがと」