走り出せ、コスモス<前編>
1時間中、ずっとうつむいてた。
ラッキーなことに、一度も当てられなかった。
私は4月からは、藤石先生の英語の授業しか取っていない。
あいさつをして先生が出て行ったから、
すぐ私も帰ろうとスクバを肩にかけて
部屋から出ようとした。
出口から左に曲がると、
「沙枝ちゃん」
… 後ろから 優しい声がして
ビクッとなった。
呼んだのは誰か、分かってる。
ゆっくり振り返った。
先生が、かるく笑いながら近づいてくる。
「どうしたの?元気ないね。」
『何でもないです。』
そう言いたかったけど …言いたくないような気もした。
私は、声を出さずに薄く笑顔を見せた。
すると、先生は驚いたような顔をして、私に聞いた。
「テストの こと…?」
なんで …わかっちゃうの?
先生は… エスパーだよ。
私の心の中なんて、
全部見えちゃってるの?
なら隠したって 意味ない… ね