走り出せ、コスモス<前編>
私はまた桜の前に立つ。
桜は、もう緑がかっていた。
武町くんが窓を開けても、花びらが入ってきたりはしないだろう。
ふふ…
あのときの武町くんの
“まずいっ!!”
って 顔を 思い出すとおかしい
先生―――
あのとき先生は、すっごく優しいかおをしたよね。
見てないけど きっと
武町くんは入ってきた先生が 先生で
ちょっと ほっとしたんじゃないかな。
まだちょっとしか経ってないけど、その間で感じた。
先生はみんなから慕われてるんだね… 特に男子。
先輩って感じのときがある。
でも、「先輩」と「先生」のバランスを適度に守って
結局はちゃんと“先生”だね。
そういうとこもすき。
ねえ、先生―――
私、先生にすかれたくて
努力してるんだよ。
気づかなくっていいよ。
でも、もしもきれいになったら……
ちょっとだけ 私のこと見てくれる?