走り出せ、コスモス<前編>


「食べようと思っても

体が受け付けないから


気分が悪くなってしまうんだよ」


先生の手が伸びてくる


先生は両手で

私の両手を包んだ


あったかさが 伝わる

そして

私の目をまっすぐに見た


「食べたくても
食べられなくなるんだよ。


思い当たることは

ない…?」



真緒ちゃんが言ってた『病気になっちゃうよ』って…


拒食症のこと…?



私は…拒食症なんかじゃないよ

だって、先生にすきになってほしいだけなんだよ…



「沙枝ちゃん」


先生が強い口調で言った。

先生の目は

私の目を捉えて離さなかった。



やだよ…

私、まだやせなきゃ

もっと 頑張りたいのに




先生は私から視線を外して

手を離して

頭をポリポリと掻いた


「おいで」

そう言って、部屋から出て行った









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